英語教育における質的研究コンソーシアム Qualitative Research Consortium in English Education (QRCEE)

第６回英語教育における質的研究コンソーシアム(QRCEE)

日時：１１月１８日（土）２時〜５時

場所：早稲田大学（早稲田キャンパス）１１号館７０１教室

内容：講演、ワークショップ

演題（Title）: Using narratives in L2 qualitative research

話者（Speaker）: Dr Christina Gkonou PhD (University of Essex)

コーディネーター(Coordinator)：Dr Masuko Miyahara

要旨（Abstract）:

Research through narratives has grown exponentially within the last decade (see e.g. Barkhuizen, Benson, & Chik, 2011; Barkhuizen, 2016), with narratives focusing on a range of aspects surrounding the L2 learning and teaching experience such as identities, emotions and classroom practices. In this talk, we will consider the advantages of using different forms of narratives in L2 qualitative research, their appropriateness and scope, as well as methods for analysing them.

当日の予定：

２時〜　講演（質疑応答）

３時３０分〜　ワークショップ

Dr Christina Gkonou

Dr Christina Gkonou is Lecturer in TESOL and MA TESOL Programme Leader at the Department of Language and Linguistics, University of Essex, UK. She convenes postgraduate modules on teacher training and education, and the psychology of language learning and teaching. Her main research interests are in language anxiety and emotions, teacher identity and agency, the emotional labour of teaching, and emotion-regulation strategies for language learning. She is the co-editor of New Directions in Language Learning Psychology (2015) and New Insights into Language Anxiety: Theory, Research and Educational Implications (2017).

第５回　感想

小澤先生の小気味好いお話しでした。日本語教育における授業研究の一環としてPAC分析などを活用している実践と研究を併せた興味深い話で、３時間があっという間でした。PAC分析というのは、量的質的調査の両方を混合した調査法(mixed methods research)の一種で、Personal Attitude Constructの略で、日本で開発された実に日本的な心理学研究に根ざす調査法です。面白いアイディアだと思いました。世界でどの程度普及しているのか定かではないですが、私自身、小澤先生の説明を聞きながら、「なるほど」と思いました。精神分析的心理療法などで使われている自由連想から教師や学習者の個人の学び（教え）を探求する方法で、率直な感想は、実に日本的な印象で、私が勝手に思っていた統計的な手法を用いた分析法とは少し違っていました。単純に言えば、調査対象者の「こころ」に調査者の「こころ」を寄り添い、共同していかに適切な情報を引き出すかを目指すより科学的（？）と言われる手法を目指した調査法と言えるのかなと思いました。一つの作法に則って分析すればある結論が得られるので多くの人が利用できる可能性がありますが、カウンセリングの応用なので、その作法に習熟する必要があるようです。私自身は目的に合わせてPAC分析のアイディアを利用するのも一案だと考えました。PAC分析はその可能性も含んだよく開発された調査法だと思います。質的分析に関しては、量的分析と違い手法に関しては柔軟性を持ち、さらには多様性を持つべきだと、これも勝手に考えています。大切な点は、いわゆる、信頼性、妥当性などと言われる保証・根拠ですが、小澤先生の話を聞いて、私自身がPAC分析に魅力を感じたのは、カウンセリングと関連する内観です。これを私の研究にも応用しようと思いました。

小澤伊久美（国際基督教大学）

国際基督教大学大学院比較文化研究科博士後期課程単位取得後満期退学。現在、国際基督教大学課程課程准教授。専門は日本語教育。主な論文に、「日本語教育プログラム運営における開発型評価活用の意義と可能性」（丸山千歌・池田伸子との共同執筆、『日本語教育実践研究』3、pp.20-31、2016年）、「『実践的な日本語』『考えさせる授業』を意識する中国人日本語教師—その背景と彼らが目指す授業—」（坪根由香里・嶽肩志江・八田直美との共同執筆、『大阪観光大紀要』16、pp.33-42、2016年）、「『留学』の先を見据えた日本語教育」（丸山千歌・小澤伊久美共著、『ことば・文化・コミュニケーション：異文化コミュニケーション学部紀要』7、pp.1-16、2015年）、「日本語を母語とする現職日本語教師Aの「いい日本語教師観」--PAC分析を活用してわかること」（坪根由香里と共同執筆、舘岡洋子編著『日本語教育のための質的研究入門--学習・教師・教室をいかに描くか』ココ出版、pp.221–246、2015年）、「日本語教育研究におけるPAC分析を活用した研究の展開」（丸山千歌・小澤伊久美共著、修刚・李运博主编『新时代的世界日语教育研究』高等教育出版社、pp.146-152、2012年）、「学部初年次教育としての日本語教育に求められるもの—帰国生に対する教育実践から—」（小川貴士編『日本語教育のフロンティア：学習者主体と協働』、くろしお出版、pp.133-160、2007年）などがある。

第４回　感想

今回も興味を持って岡田先生の話を聞きました。感謝です。

私は、英語教師や授業に興味を持っているので、話し言葉を探求し、その意図を「見える化」する作業は、言葉に対する意識を育む意味で、教員養成には重要だと思いました。それとともに、文化間の意識や理解においても、会話とそれに付随する状況から意図を読み取るということに対する感覚を育成することも、話の中でヒントがありました。私たちは、自分が持っている曖昧な感覚や雰囲気や態度などで判断して、言葉をあまり聞いていないことが多いと思います（特に私はそうです）。ちょっとしたことで誤解が生まれ、意図したことが正確に伝わらない、あるいは、言葉の裏にあることを変に邪推したり、裏をあっさりと見破られたりすることが多々あるようです。日本語の場合は、特に、それが複雑な気がします。英語は、あちららこちらで多くの人が使い、より複雑な会話や談話があり、言葉そのものをそのまま理解する必要があり、また、勝手な推測も危険なことがあり、明確にする努力を怠るととんでもないことになったりします。メールもSNSもあり、いわゆる会話の形や相が多面的になり、浅いコミュニケーションがたくさん起こり、確かに表面的には、コミュニケーション能力が発達しているように見えますが、逆を言えば、あちらこちらで誤解が生まれる土壌が生まれやすくなっているのかもしれません。授業中に生徒が発話する英語や、それを促すティーチャートークも、応用会話分析的な手法を取り入れて教師が分析的な視点で考える機会を持つことも必要だなと思いました。私は、ティーチャーリサーチということをいつも考えています。綿密な会話分析は難しいかもしれませんが、教師が、ちょっとした教室の英語使用をふと立ち止まって考えるのは意義深いと思います。ワークショップで提示されたような場面を、文字に起こし、再現し、分析してみるのは、教師にもできるし、自分の発話だったら、自分のその時の意図も分かるし、「間」の意味も「見える化」しやすいでしょう。このプロセスは、教師にとっても、授業のやり取りを考える意味で役に立ちます。また、そのような会話分析は、他の人にとっても貴重です。また、様々な意図を持って人は会話するので、外国語として英語を学習する人にとっては、利害に関わるやり取りの重要性を意識的に考えて英語を学ぶことは、確かに必要です。私は、CLILと最近呼ばれる内容重視の英語学習に興味を持っています。そこでも応用できそうな知見でした。勉強になりました。

第３回　感想

第３回の感想です。リフレクティブ・プラクティスについて玉井先生がきちんと整理して説明してくれたのでよかったです。ほぼ納得でした。私が教師認知に興味を持ったのと、ほぼ同じような発想で、教師教育に携わっているのだと、共感しました。また、研究の倫理に関しては、確かに、研究者として、また、教師として、きちんとルールは守ることが大切だと思いました。その点、日本は「ゆるい」ということだと思います。分野によっても違うと思いますが、応用言語学では、どうしても「このくらいはいいのではないか」と思ってしまいます。話を聞きながら耳が痛くなりました。今回は、二つの話題が双方とも質的研究では大切なことなので、たいへん勉強になりました。

当日の資料は下記よりダウンロードしてください。

玉井健先生

Robert Croker先生

玉井健先生

１　実践者による質的英語教育研究：Reflective practiceをめぐる理論と方法、その問題点　　玉井健（神戸市外国語大学）概要：英語教育研究は、元々教室でティーチングという営みを行う実践者の疑問と共に生まれ、リサーチとして育っていくものでした。ところが応用言語学が心理学的手法を取り入れるに従い、客観性の担保と結論の一般化を命題とする研究法一辺倒になってきました。同時に課題も研究者も現場の外からやってきて、過程や分析、結論の引き出し全てが実践者の手を離れてしまい、実践者は研究者にデータを提供するだけの存在になってしまった観があります。こういった流れに疑問を呈して質的研究法が注目をされつつありますが、英語教育において、実践者と実践研究者が経験を共有しつつその理解を深めていく研究方法は具体的にどのようなものでありうるのでしょうか。本講演ではReflective practice　を実践研究法として取り上げつつ、「学び」を質的にとらえる多様な理論的視座と方法論、その問題点を議論してみたいと思います。

第２回報告

Paul Dowling先生を招き、Qualitative Approaches and Methods in Social Researchという演題で話していただきました。渡辺敦子先生と宮原万寿子先生のご紹介で来ていただきました。参加者も４０名を超える賑わいで、この分野のニーズが高いと強く感じた次第です。Dowling先生はsociologyが専門ですが、理科や数学教育にも通じていて、research methodologyを探求しているそうです。本日の話は、qualitative researchの大枠の話をしていただき、それほど細かい話ではなかったので、幅広い参加者の方の満足度も高かったようです。私個人としても、質的研究の重要性を感じました。もちろん量的研究は重要性ですが、やはり何を目的とするかです。Dowling先生の話を聞きながら、それを強く思いました。

結局、リサーチはリサーチです。探求すべきことを大切にすべきです。瑣末な方法論ばかりを話題にすることは避けなければいけません。どれだけ人を納得させ、どれほどリサーチが意義のある結果を出せるかです。

ワークショップでは、ロンドン動物園のスマトラ虎のリーフレットを題材に考えました。当然のことながら、何も前提がなければ、人がどのようにそれを見て、分析するかは、全く違います。正確な答えなどある訳はありません。自然科学の手法は事象をいわゆる「科学的に」分析します。それはその事象のある一端を捉えたに過ぎません。現実はもっと複雑です。教育はそうです。教育のリサーチはやはりそう考えるべきです。大切なことはそのリサーチ結果が意義がある結論を出しているかどうかです。

Dowling先生は、さいごに、特に、Grounded Theoryが教育分野では役立つリサーチではないかと提言しました。そうかもしれませんが、それもあくまで、Dowling先生の視点であろうと思います。大切なのはリサーチャー自身だと思った次第です。（文責：笹島茂）

内容：講演、ワークショップ

参加費：無料

詳細：http://eltqualitativeresearchjapan.blogspot.jp

問い合わせ：笹島茂（東洋英和女学院大学）

　　　　　　sasajima.s@toyoeiwa.ac.jp

Abstract

All research involves interpretation. Qualitative research often foregrounds this feature, but this does not mean that qualitative analysis is arbitrary. Rather it is informed by the theoretical position and/or the methodological approach that is being adopted and by what grounded theorists refer to as the theoretical sensitivity of the researcher. Qualitative researchers generally do not deploy random or even representative sampling, because they are usually not claiming to be able to generalise from a sample to a population. Rather, they are seeking to identify processes and structures within a particular setting or settings, an understanding of which may inform further research or practice in the field or in related fields. In this session I will attempt to illustrate this through a presentation of different approaches and methods used in qualitative research and by the practical analysis—in a workshop format—of a visual/verbal text that will be made available in advance of the session.

当日資料の一部（ダウンロード）

Paul Dowling氏のウェブ（当日のスライドなどあり）

Doctoral Studies and the end of Utopia

第１回報告

ちょうどよい人数でナラティブについて勉強した。まず、宮原先生が日本人学習者の英語教育にかかわるアイデンティティーのPhD論文の内容をもとに、ナラティブ研究をどのように行ったかを話してくれた。事例をもとに具体的にどう考えたかはとても分かりやすく、面白く聞かせてもらった。その後、ある事例をもとにどのようなテーマを立てるのかなど、それぞれのグループで話し合った。ある事例を、どのような立場で、どのように見て、どのように解釈して、どう分析し、どのようにまとめ、他人に理解してもらえるように、どう開示するかは、やはりむずかしい。時間もかかるし、簡単な方法はないだろう。しかし、宮原先生が述べていたことで最も印象に残ったのは、ナラティブの研究の面白みは自己理解とかかわることだ。研究者としては、やはり科学的に質的研究を探求することは大切であるが、教育者としては、この点をもう少し探求し、ナラティブ研究を推奨したいと思った。（文責：笹島茂）

英語教育における質的研究コンソーシアム Qualitative Research Consortium in English Education (QRCEE)

『英語授業をよくする質的研究のすすめ』（ひつじ書房）

2015年4月15日水曜日

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『英語授業をよくする質的研究のすすめ』（ひつじ書房）

2015年4月15日水曜日

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